ハサミで袋を切り開ける
「食品の袋をハサミで開ける」という作業について考えます。
これは必ず自助具が必要になる作業で、片麻痺の患者さんにとっては、関心のあるテーマの一つだと思います。
私も以前に、このたぐいの自助具(オリジナル)を作りました。
ハサミで切る - 左手のみ ハサミで切る その2 - 左手のみ
その特徴は、ラボジャッキを使用し、色々な高さの袋に対応していることです。なかなか良く出来た作品(?)になりました。
そうして作った自助具ですが、しばらく使っていると、色々と使い辛い点が見えてきます。
ここで、使い辛いところを、我慢して使っていてはいけません。
具合の悪いところを改善し、細部まで手を入れる事により、より完成度の高い自助具になっていくと思います。
(「単にヒマなだけ」という意見は無視します。)
さて、「ハサミで切る自助具」にも、3点ほど気付く所がありました。
問題点1、自助具が大きく、調理台の近くに置けない。(極力、調理台の側に自助具が有る事が望ましい。)
片麻痺なので、歩行にも障害があり、距離が離れると移動が辛い。
問題点2、 コンパクト、かつ軽量になっていない。
1にも関連しますが、調理台の近くに置くのであれば、コンパクトでないと邪魔になります。
軽量であった方が、片付ける時に楽です。
問題点3、汚れても、気軽に洗うことができない。
「食品の袋」を対象としています。汚れることも考慮する必要があります。
この3点を考慮して、「食品の袋をハサミで開ける自助具 V2」を作っていきます。
◯材料
コルク(代替コルク)栓
醸造3点キット エアロック・ラバー栓・ワイン瓶コルク (ボトル栓 15P)
ブランド: NewLife NewDesing
価格: ¥698 (Amazon)
ネオジム磁石 マグネットフック 10個セット 強力マグネット 磁石 フック 耐荷重8kg 穴・ネジ付き 磁力がない木板対応 キッチン/オフィス/業務/浴室/室外/壁掛け用 直径20mm
ブランド: JOUMER
価格: ¥1,599 (Amazon)
フェライト磁石
TRUSCO(トラスコ) キャップ付フェライト磁石 外径23.5mmX厚み5mm10個入り TFC24R-10P
トラスコ中山(TRUSCO)のストアを表示
価格: ¥909 (Amazon)
ワッシャー
鉄/三価ホワイト 丸ワッシャー [特寸] (公差: 4.5+0.3)4.5×20×2.0
【 バラ売り : 10個入り 】
商品単価:356円 (楽天市場 ネジのトミモリ)
タッピングネジ
鉄/三価ホワイト (+) サラタッピング [1種A形]
M4×20 【 バラ売り : 10本入り 】
323円(税込)
送料290円 (楽天市場 ネジのトミモリ)
ステンレス板
ステンレス板(SUS430 磁性をもつ)
SUS430
商品コード: SUS430-order
商品名: SUS430 3.0 450x500mm R:12mm x 1点
単価:¥5,654 (イタチョク - 切り板直送便)
送 料 ¥1,000
接着剤
セメダイン 超多用途接着剤 スーパーX クリア 135ml AX-041
ブランド: セメダイン(Cemedine)
価格: ¥887 (Amazon)
◯工作
代替コルクを用意します。
コルクとワッシャーの接着面にサンドペーパーを掛け、面を荒らします。
ワッシャーとコルクの両面に接着剤(スーパーX クリア)を塗り、10分間乾かします。
その後、ワッシャーとコルク栓を接着します。
コルク栓の直径が22mmで、ワッシャーの直径が20mmです。コルク栓とワッシャーの中心を、できるだけ合わせて下さい。
ワッシャーとコルクをしっかり押さえて、1日置きます。
コルク栓の販売単位が15ヶなので、15ヶのワッシャーを貼り付けます。
※代替コルク栓について
ここでは代替コルク栓 (合成コルク栓)を使用します。
天然のコルク栓は、品質にバラツキがあり、脆い物が有ります。
※ワッシャーについて
本当は穴の空いていない鉄の円盤が欲しかったのですが、そのようなものは特注しない限り手に入りません。なので、似た形のワッシャーを代用に使いました。
ワッシャーの厚みは2mmです。
ワッシャーは三価ホワイトのメッキ仕上げで、錆を予防します。(三価ホワイトは、無毒のメッキです。)
コルク栓にフェライト磁石を貼ります。
コルクとフェライト磁石の接着面に、サンドペーパーを掛け、面を荒らします。
フェライト磁石の直径が 23.5mmです。(コルク栓の直径よりも、1.5mm長くなります。)
コルク栓とフェライト磁石の両面に接着剤を塗り、10分間乾かします。
その後、フェライト磁石とコルク栓を合わせ、しっかりと押さえます。
一昼夜放置し、完全に乾かします。
フェライト磁石の付いたセットを5セット作ります。
コルク栓にネオジム磁石をネジ止めします。
コルク栓の中心に印をつけます。
ネオジム磁石をタッピングネジで、コルク栓にねじ込みます。
コルク栓が柔らかいので、下穴は省略します。下穴を開けずにタッピングネジをねじ込んで下さい。
その後、一旦ネジを外します。
ネジにセメダインスーパー Xを塗布し、再度ネジを締めます。
(強くネジ込み過ぎると、ネジ穴をナメてしまうので、注意してください。)
10ヶのネオジム磁石をネジ止めしたら、完成です。
◯使ってみる
3種類の袋を用意しました。
お茶漬け海苔の袋を切ってみます。
ステンレス板を敷きます。(調理台には、常時敷いたままです。)
SUS430のステンレスは磁力があります。
フェライト磁石のついたコルク栓を3ヶ使います。
コルク栓を二つ並べて、お茶漬けの袋を置き
残りのコルク栓で挟みます。
ハサミで切ります。
切れました。
もっと大きな袋を開けます。
かっぱえびせん(レギュラーサイズ)の袋を切ってみます。
フェライト磁石付きのコルク栓を5ヶ、ネオジム磁石付きのコルク栓を4ヶ使います。
コルク栓だけだと、背が低いので、ネオジム磁石付きのコルク栓で延長します。
フェライト磁石とネオジム磁石を分けていますが、これには理由があります。
ネオジム磁石をステンレス板に貼り付けると、約8kgfの吸着力で張り付きます。
磁力が大きいと、磁石の場所を移動する場合にうまくいきません。
フェライト磁石の吸着力は、磁石の吸着力は23.52N(2.3983725329241kgf)で容易に動かせます。
こんな感じで、磁石を置いて、かっぱえびせんを置き
挟んで
切ります。
切れました。
更に大きな袋を開けます。
ポテトチップの袋を切ってみます。ビックバックです。
(これが、対応可能な最大サイズです。)
延長を3段にします。
ポテトチップの袋を置いて
挟んで
切ります。
切れました。
◯結論
いい感じで袋が切れます。
フェライト磁石の吸着力は、このくらいがいいと思います。(TFC24R)
磁力が弱ければ安定しませんし、強すぎれば動かし辛いことになります。
無理に力を入れれば倒れますが、ハサミを入れるだけので、それほど力は必要ありません。
使わない時には、バスケットに吸着して保管します。バスケットは調理台の真上にあるので、使いたい時にすぐ取り出せます。
対象となる袋の高さに応じて、自助具の高さを延長できます。
延長できる高さの刻みは45mmですが、この程度の刻みでも、実用上問題ありません。
やろうと思えば長さの変更も可能です。(コルク栓をカットする。)
水洗い、乾燥が可能です。合成コルクは殆ど水を吸いません。
調理台から移動せずに、ハサミが使えるので
めでたしめでたし